Hikari Goke (1992) / ひかりごけ

『ひかりごけ』は1954年に発表された、武田泰淳の短編小説を原作とする熊井啓監督の映画。

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Hikari Goke (1992) / ひかりごけのあらすじ

北海道の知床半島・羅臼を訪れた作家を案内する地元中学校の校長。2人は天然記念物のひかりごけが簇生するマッカウシ洞窟内で金緑色の光を投げかける一面のひかりごけに圧倒される。その帰途、校長は昭和18年に起こったある事件の話を作家に語った。それは軍属だった4人の漁師を乗せた船から転落し、吹雪の烈しい荒海を泳ぎ抜け、マッカウシ洞窟に唯ひとり漂着した船長(三國連太郎)が、自らを励まし寒さと飢えに耐え忍び、遂に3カ月後、無事生還したというのだ。だが、生還から5カ月後、沖から漂着したリンゴ箱内にバラバラの人骨と衣服が納められているのが発見され、警察の取り調べを受けた船長は、洞窟内にもうひとり生存していた西川という船員が力尽きて死亡した後、彼の屍肉を食べて生きながらえたのだと自白、美談は一気に人食肉事件に転落する。しかし、なおも校長は、その船長の自白に疑問を呈する。ひとつは他の2人の行方不明船員も船長と西川が食べたのではないか? もうひとつは船長が西川を食す目的で殺人を犯したのでは? ということだった。校長の話に導かれるように作家は、洞窟内の極限的な人間同士の葛藤、そしてその後、船長が裁かれる裁判へと思いを馳せ、構想をたて始めていた。裁判官や遺族を前に船長は他人の肉を食べた者か食べられた者に裁かれたいと言う。やがて船長の脳裏に洞窟で起こった一部始終が甦えり、裁判長、検事、弁護人、そして死んだ船員の八蔵、西川、五助に見送られてひとり洞窟の中へと消えていく船長。その洞窟を前に、この不条理な事件の取材を終えた作家は、何かにとりつかれたかのように羅臼を後にするのだった。

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